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国境を越え、平和な、希望のもてる
新しい世紀を築くために 提言

(2000年6月16日)

<目次>
はじめに
1. 国際的なさまざまな課題と市民の役割
2. 国際的な視野や広がりをもち活動を進めために
3. 私たちにできること、社会全体で考えること〜具体的な取り組み課題
(1) 市民としてあなたができること
  ・未来をひらく子どものきみたちへ
(2) ボランティア活動推進機関の役割
(3) 企業や行政への期待〜より広範な活動基盤整備のために
まとめ〜21世紀に向けて

 

はじめに

 これから私たちの社会では、国境を越えた交流はますます深まり、共に暮らしあうために、社会基盤の整備やマナーをさぐりだしていくことが求められてきます。そのためには、国や企業などの果たさねばならない役割も大事ですが、何よりも私たち市民一人ひとりの意識と行動にかかる部分が大きいと思われます。
 
 一方、人口問題、環境問題、食糧問題など、いま世界が抱えている諸問題は、すべて地球規模で考え、行動しなくては解決が困難です。自分だけ良ければいい、自分の国のことだけを考えていさえすればすむというのではなく、この現実に一人ひとりが向き合い、ささやかではあっても自分のできることに取り組むことが、共に暮らしあう世界をつくる原動力となると考えます。
 
 ボランティア活動を進めている私たちは、これまでの活動を通して、自分たちのまちや暮らしがさまざまな形で世界とつながっていることに気づかされてきました。そして、異なる文化をもつ人々と喜びや楽しみを共にし、痛みを分かちあうことの大切さを痛感してきました。
 
 福祉、教育、環境、まちづくり、人権、平和など、活動の分野は違っても、かけがえのない命を大切にし、人がその人らしく誇りをもって生きていけるよう支えあっていくことは、ボランティア活動が育くんできた共通の願いです。それは文化や歴史の違いを超えた、最もベースとなる価値観ともいえましょう。
 
 その意味から、ボランティアが国際的な広い視野から、もう一度日々の活動を見直して、新しいつながりや活動をつくっていく努力をすることや、自分たちの経験を伝えていくことは、これからますます国際化が進む社会のなかで、何よりも大切ではないかと思います。
 
 この提言は、地域でボランティア活動に取り組む人々や、一人ひとりの市民に私たちの経験を伝え、一緒に考え、取り組んでいくことを提案するものです。また、推進機関、学校、企業、行政など各方面の関係者とともに、社会全体に活動と理解の輪を広げるために、共に歩んでいくことを呼びかけるものです。

▲UP

 

 

1. 国際的なさまざまな課題と市民の役割

(1) 国際的な問題をとらえる視点
 
●世界にある貧困や紛争
 
 まず、世界にあるさまざまな問題を直視することが大切です。
 
 そのひとつは、先進国と途上国との経済格差が雪だるま式に拡大している現実です。1820年には3対1でしたが、1997年には74対1にまで広がりました。途上国の約3分の1にあたる13億人の人々は一日1ドルに満たない所得で暮らしています。そして、このうち9億5,000万人は、南アジア、東アジア、東南アジア・太平洋地域など、私たちと同じアジアに暮らす人々です。
 
 また、民族、宗教的対立などを背景とした紛争、人権的抑圧や差別、その結果としての難民流出なども、今日の世界の現実の一側面です。紛争等を背景にした難民は、全世界に2230万人いるといわれています(1998年/UNHOR)。
 
 これら貧困や戦禍は、特に子どもや女性に深刻な影響を与えています。世界の1億6,000万人の子どもが中度または重度の栄養失調であり、1億1,000万人の子どもが学校教育を受けていません。また、毎年50万人の女性が出産時に死亡していますが、これは先進国と比べると10倍から1,000倍の率にものぼります。

●日本社会の国際化
 
 一方、日本社会の内なる国際化も進展しています。1980年の日本国内の登録外国人数は78万人でしたが、1998年には150万人を越えました。この他にも留学生が5万人強、訪日外国人が年間500万人弱、不法滞在している人もかなりの数に上るといわれています。これらの人々は、生活にかかわる情報の入手、医療、職業、住居などの面で多くの困難を抱えています。
 
 また食料品の自給率(カロリーベース)は42%(穀物自給率は30%/1995年農水省)で、主要先進国中では最も低い水準です。私たちは日本に居ながらにしてさまざまな国の食を体感できますが、日本の食文化を支える素材でさえ、その多くは外国からの輸入に頼っているのです。

●相互依存関係の深まり
 
 インターネットを始めとする情報技術の進展により地球上のあらゆる出来事がリアルタイムで伝わり、さまざまな影響がかつてない規模で瞬時に広がるようになりました。経済、政治、文化、職業など国境を越えた結びつきはますます緊密化し、生活のあらゆる局面で世界的な相互依存関係が深まっています。世界はまさに一つの共同体となってきているといえます。
 
 しかし、同時に、先進国と途上国との貧富の差がさらに拡大したり、私たち先進国の資源浪費的な生活・消費活動によって地球環境の悪化が進んでいるという、現在のグローバル化の負の側面をもしっかりと認識する必要があります。
 
 地球の2/3の国につけを回すことで1/3の国の豊かさが成り立っているような現在のあり方が長く続くはずはありません。先進国の視線から物事を捉えて、さまざまな国の文化を先進国の文化や標準にあわせることでよしとしてしまうのではなく、途上国と先進国とが対等な立場で対話していくことが何よりも大切です。
 
 そして、世界の人々と共に生き、世界を舞台として役割を果たすために、一人ひとりが何をすべきか考え、行動していくことが求められています。

(2) 草の根の国際交流・支援活動の広がりと深まり
 
 地球市民の意識に根ざした活動は、日本国内でも広がりと厚みを増しつつあります。
 
 日本に暮らす外国人の増加にともない、地域では、国際理解・交流、青少年教育、語学教育、芸術・文化などさまざまな国際的な交流活動が生まれています。こうした活動を行う団体は、現在7000団体弱あるといわれています(1996年/地域国際化協会)。そして、交流活動をきっかけとしながら、外国人が日本で暮らすうえで直面するさまざまな問題に気づき、日本語学習の支援、留学生の支援、結婚や子育ての支援、医療・労働などの相談・支援、シェルターなど、日常生活を支える活動も生まれています。
 
 また、海外への支援活動も年々活発になっています。難民、災害救援、女性、子ども、先住民族などの人権擁護のための活動、地域開発、教育の普及、保健医療活動、職業訓練等の開発支援、植林、熱帯雨林の保護や生態系の保存などの環境保護活動、地雷廃絶、軍備撤廃などの平和活動などに取り組むNGOは現在387団体あり、これらの団体を約36万人の市民が会員として支えているといわれています(国際協力NGOダイレクトリー2000/JANIC)。NGOそれぞれが活動に取り組むとともに、互いにネットワークを結び、政府機関との協議やパートナーシップも生まれつつあります。
 
 このように市民による草の根の国際交流・支援活動は、日本でも着実に進展しているといえますが、より一層の発展もまた期待されています。日本のNGOは他国のより大規模なNGOに比べれば資金面、人材面でまだまだ脆弱であるといわれています。国内の交流活動も、地域の人々の意識や態度を変えていく力強さをもつことが期待されています。
 
 国際的な交流・支援活動に関心をもつ市民は増えているものの、実際の参加や支援はまだ十分ではありません。活動の一層の広がりと深まりをつくりだすために、より多くの人々の共感と参加を得ていくことが求められています。

▲UP


 

2. 国際的な視野や広がりをもち活動を進めために

 ボランティアは、生活の中から、新しい価値やつながりを創造する力をもち、またその役割があります。次のような考え方、視点にたつことで、地域社会のなかから国境を超えて市民レベルの連帯の輪を広げ、国際的な交流・支援の活動をつくりだすことができます。(参照/図「ボランティア活動の広がり・構造のイメージ」)

意識や活動の壁を取り払い、活動のバリアフリーを進める
 
  ボランティア活動は、「いのち」「人権」「その人らしく生きること」を最も大切な価値観としています。それは、国内の身近な地域をよくするための活動であっても、国際的な交流・支援活動であっても同様です。ボランティア活動をしている人にも、国外の活動は自分とは無関係だと思う人がいるかもしれませんが、身近な地域であっても他国であっても、目指すものは共通です。
 
 国と国が行う国際協力や支援には国境がありますが、私たち市民が行うボランティア活動には国境はありません。私たちは「身近な地域」で暮らしを見つめ直し、互いが豊かに生きるために活動に取り組むのと同じように、「他国のある地域」を理解し、支援することができるのです。

活動全体の広がり、つながりを考え、自分のできることに取り組む
 
 「地球規模で物事を考え、地域で活動する」−”Think globally, act locally.”といわれるように、ただ自分の活動のことだけを考えるのではなく、広い視野から見て、自分たちの活動がどのような役割を果たしているのか、他のさまざまな活動と相互にどのように関連し、影響しあっているのかを考えることが大切です。
 
こうした視点をもてば、国際的な交流・支援活動は、どの地域、どの場でも始めることができます。

「交流」「支援」「理解」の循環をうみだす
 
 国際的な「交流」、「支援」、「理解」の活動は、循環し、深まっていきます。
 
 例えば、学校で子どもたちが国際交流の活動を行おうとした時、まず、ある海外の国の子どもたちとかかわり合うきっかけをつくり、お互いを知るという交流活動を始めます。それはやがて自分たちなりにできることを考え、実践していく支援活動に発展します。そして実際の活動を通して、互いの国や文化、人々の共通点や相違点を理解し、またさまざまな課題や構造的な問題にぶつかり、学びます。それが交流や支援活動の充実・発展へつながります。
 
 活動プログラムを進める際は、このような循環構造を認識することが大切です。

対等な関係で、相互に学び合う
 
 「やむにやまれぬ気持ちから」「何かしたいと思って」国際的な援助などが行われることは自然なことです。しかし、それが富めるものから貧しいものへ、強者から弱者へといった一方的な支援や援助になるのでは意味がありません。
 
 市民同士が、活動を通じて、相手のもつ自分たちにはないよい伝統や、価値に気づき、互いが学び合うことによって、対等な立場でお互いの違いを理解し、受け入れ合うことができます。

継続的にかかわり、自立を支援する
 
 支援活動の展開にあたっては、それが本当にその地域の人々の自立につながっているのかを常に問い直すことが大切です。その援助がなくなったとたんに地域の生活水準が元に戻ってしまうような支援は、結局は効果的ではないからです。
 
 長い目で継続して、よく話し合い、努力し合いながら、支援プログラムの内容を常に見直し、相手が自分の力で活動を持続していけることを目指す必要があります。

自国と他国との歴史的・構造的な関係、互いの歴史・文化を知る
 
 他国の人々とのかかわりをつくる前提として、自国がその国とどのような歴史的な関係をつくってきたのか、現在どのような政治的・経済的な関係にあるのか、といったことを正しく学び、理解していくことが不可欠です。また、その国の歴史や文化を知るためには、自らの国の歴史や文化を知ることが重要です。
 
 そのような知識や学習は、お互いを理解し、受け入れ合い、真の相互関係をつくっていくうえで欠かすことができないものです。

推進機関の役割
 
 ボランティア活動者は、時に、自分たちの活動に一生懸命専念するあまり、日々の自分達の活動にのみ埋もれてしまうことがあります。その結果、それぞれの活動の間に壁ができ、協力や連携が難しくなることがあります。
 
 異なる分野のボランティア活動者をつなぎ、活動者間の壁を取り払っていく「活動のバリアフリー」を進めること、またボランティア活動者が互いを知り、共に活動やサービスに取り組んでいくための交流の場を積極的につくっていくことが、ボランティア活動推進機関の役割です。それによって、活動者が課題・問題を共有し、協力して課題の解決を目指していく活動者間のネットワークをつくっていくことができます。

▲UP

 

 

3. 私たちにできること、社会全体で考えること〜具体的な取り組み課題

(1) 市民としてあなたができること

 国際協力・支援活動は、なにも現地での協力・支援だけを意味するものではありません。すでに何らかのボランティア活動を始めている人も、これから何かしたいと思っている人も、自分の日常の暮らしのなかで「暮らしを見つめ直す」こと、身近な地域や職場でさまざまな人と「かかわりをもつ」「理解しあう」「住みよい地域づくりを考える」といったことを通して、自分ができることを数多く発見できるのではないでしょうか。
 
 外国人も含めたさまざまな人がコミュニティ(地域)で生活を共にし、お互いにかかわりあうための知恵や生活習慣などをつくりだすこと、つまり「市民による共生の文化」を創造することは、市民が暮らしのなかでできる大切な役割といえます。
 
〜私自身ができること

身近な「国際化」に目を向ける
 
 衣食住にかかわること、とりわけ水や大気、ゴミなど環境問題は、世界中の人々が等しくかかわりあう課題となっています。これまでの自分の生活や暮らしを見つめ直すことから「私と国際化」を考えてみることによって「私ができること」を見つけ出せるのではないでしょうか。

暮らしの情報や習慣などを知らせる
 
 私たちが見ず知らずの土地に引っ越したときのことを考えれば、海外から日本に初めて来た人々のとまどいが想像できるのではないでしょうか。ごみの出し方(分別の仕方や収集日に出すこと)、スーパーマーケットや安売りのお店の場所、キャッシュカードを始めとした銀行の利用の仕方、医院や薬局の場所、切符の買い方やバスの乗り方など、わからないこと、戸惑うことは限りなくあり、それを知らないがために生活に大変な不便を感じたり、地域の人との摩擦を起こしたりということが多々あります。
 
 私たちにできる最初のこととして、地域の暮らしに欠かせない情報や生活習慣・風習など、ちょっとしたことを知らせてあげることがあります。
 
〜地域・コミュニティでできること

交流を通して「違い」と「同じ」を楽しむ
 
 さまざまな付きあいの過程では、価値基準を押し付けることのないように気をつけなければなりません。主食が米で、箸と茶碗の文化圏の日本と韓国ですが、例えば食事のときのマナーひとつとっても両国では大きな違いがあります。日本ではご飯の茶碗をもって食べるのがエチケットで、韓国では反対にテーブルに置いたまま食べるのがエチケットになっています。
 
 国や地域、そして民族によって好みの香辛料が異なるように、それぞれが長い年月のなかで培ってきた文化や生活習慣には違いがあります。その違いを互いに理解し、尊重しあうことが、地球市民としての「はじめの一歩」になると考えます。
 
 とりわけ、楽しい時間を共有する経験は何よりも大切です。例えば、その国や民族の家庭料理の試食会、民族音楽や伝統芸能のミニコンサートなどは、世代を越えて誰もが楽しみながら参加でき、それを通じて互いの違いを知ることができる催しとなります。そこから料理や音楽を教えあったり、日常的な交流などにもつながっていくことでしょう。職場や学校、地域でのまつりや行事、文化祭、運動会なども、近隣に住む外国の人々と交流し、理解を深めあえる貴重な機会です。
 
 『みんなちがって みんないい』とは、童謡詩人金子みすゞの詩の一節ですが、それぞれの違いを認めあい、尊ぶことから、新しい出会いが始まり、互いの支えあいに結びついていくと考えます。

生活のなかでの支援
 
 身近な地域で暮らしている外国人とのかかわりを通して、彼らの抱える悩みやニーズに気づくことが、より日常的な助けあいにつながります。例えば、育児などの相談にのる、PTAに誘いあって一緒に出たり、友人を紹介する、簡単な通訳ができる人を探してみるなど、気軽にできることもたくさんあります。
 
 さらに、より多くの仲間を募って、日本語教室を開いたり、留学生を支援するためのバザーを行ったりといった活動も考えられます。

活動の中の「国際化」に目を向ける
 
 すでにボランティア活動を始めている人は、「はじめの一歩」として、自分たちのグループでは何ができるのかをミーティングの際などに話し合ってみることから始めてはどうでしょうか。最初は、国際化のイメージや日ごろ思っていることや地域で気になっていることを話し合うことから始めてもよいかもしれません。
 
 あるいは、日本人・外国人をとわず、身近な地域に、異質であるとレッテルを貼られ、排除されている人々がいないかどうかを考えてみると、あらためて発見したり、気づくことがあるかもしれません。少数者の問題、差別されている人々の問題に敏感になることは、国内外のさまざまな問題への関心、かかわりにつながっていきます。
 
 自分たちのグループの活動に国際の視点を加えてみることで、グループの、そしてグループを構成する一人ひとりの活動の幅に広がりや厚みがましていくことでしょう。

私や私たちの思いを伝え、広げる
 
 学習や活動を通じて触れたニーズ、さまざまな問題点を個々人やグループ内だけにとどめずに、いま、何が問題で、それを解決するためにはどのような活動や支援が求められているのか、といった「気づき」や「考え」を、家族、友人、職場そしてコミュニティへと伝えてください。市民の意識を変えていくためには、同じ市民のあなたが、あなたの言葉で思いを伝えていくことが最も効果的です。
 
 地域社会のより多くの関係者と問題を共有し、共に取り組みを進めていくことは、市民としてのとても大事な役割・活動といえます。

学校と市民の連携
 
 学校との連携は大きな課題となります。
 
 大きな教育改革の一環として2002年からは新しい教育課程が実施され、そのなかで全国の小・中・高等学校に「総合的な学習の時間」も設けられます。「総合的な学習の時間」では、現代的な課題に即した学習のテーマの一つに国際理解が挙げられています。
 
 この時に、子どもたちに何を伝え、何を学んでもらうのかを、よく吟味することが大切です。外国語を学んだり、また外国の歴史や文化を学ぶこととともに、真に国際的な共生感覚を育むことが求められます。
 
 そのためには、地域のさまざまな人々や団体、NGOやボランティア活動推進機関が、学校の教育活動に参画し、市民として、さらに、コミュニティ(地域)の中で、共に子どもたちを育てていくことが期待されています。その際は、国際理解教育・開発教育、環境教育、人権教育などの分野で開発されている教材やプログラムを活用し、それらを取り入れながら学校教育の中に根づかせていく努力も求められます。
 
〜よりグローバルに

NGOの活動への参加
 
 アジア諸国など、現地で活動を行っているNGOは、現地へのスタディーツアー、地域での交流プログラムなど、市民を対象にしたさまざまなプログラムを提供しています。きっかけとしてこのような活動に参加してみることができます。
 
 また、海外に出かけなくとも、こうしたNGOの活動を理解し、支援をしていくこともアクションとなります。会員となって会費を納めること、寄付することは、資金面から活動を支える重要な参加方法です。また、国内でのバザーやイベント開催などのときには、NGOは多くのボランティアを求めていますし、事務所での定期的な事務ボランティアとしての参加の方法もあります。

国境を越えた交流・支援活動
 
 募金・寄付活動などのほかにも、留学生をホームステイで受け入れる、里親運動などによってある地域を継続的に支援する、戦争などの歴史や経験を互いに学びあい、伝承していくなど、国境を越えたさまざまな交流・支援活動に取り組むことができます。
 
 ボランティアグループであれば、同じ活動に取り組む団体同士が自らのノウハウや経験を発信し、交換し合うことで、より豊かな活動に発展していくことができるでしょう。インターネットを利用すれば、団体の規模に関係なく、継続的に意見交換したり、共同で調査研究などに取り組むことも可能です。
 
 国境を越えた交流・支援活動は、継続的にかかわりあうことによって、互いによりよく理解しあい、多くのことを学び合えると考えます。

未来をひらく子どものきみたちへ
 
地球という同じ星に住んでいる君たちと世界中の人たちは仲間、友だちです。一人ひとりのいのちは、君のいのちと同じ重さです。その人たちのことを調べたり、心にとめて考えたり、心配することは、その人たちと、あく手をしたり話しあったりすることと同じくらい大事なことです。
 
 地球に住むみんなに君と同じくらいのしあわせがくるように、家の人や先生に教えてもらいながら、みじかなことから考えてみよう。君たちが今日からでもできることがあります。 それは、近所で出会った外国の人にあいさつをすることです。きっと元気な声であいさつが返ってくるよ。ひょっとしたら、その人の生まれ育った国のあいさつの言葉を教えてくれるかもしれないね。
 
 それから、外国人の友だちがいたら、その国のことをたくさん教えてもらおう。君も同じくらい日本のことを教えてあげよう。君が聞いたことを家の人やほかの友だちにも伝えてあげることも大切なことです。
 
 もう一つ大事なことがあります。それは、君の毎日のくらしと、世界中の人たちとのかかわりやつながりを学校や家で勉強してみることです。
 
 たとえば、学校の給食や家で食べるごはんのざいりょうのうち、どんなものがほかの国から日本に入ってきているのかとか、世界で何人くらいの人がご飯をおなかいっぱい食べることができないのか、といったことです。
 
 そして、勉強をしてみたら、君ができること、活動しているなかまや、グループにはいってできることを見つけてやってみよう。
 
 たとえば、ユニセフや赤い羽根などの募金活動をすることもその一つです。それから、君がかいた絵や手紙、そして君がいっしょうけんめいがんばって作ったものをおくることもできます。
 
 そうした君の行動は、家族や友だちにかならず「やさしさ」となってつたわり、その人をあたたかくします。やさしいことは、年をとっても、世界中のどこでも一ばんかっこいいことなのです。

 

▲UP


 

(2) ボランティア活動推進機関の役割

 多くの人々や団体、学校、企業、自治体等が、それぞれの活動場面で国際化の問題に直面し、それを解決しようと努力することで貴重な知識・経験を積み重ねてきています。それを各々の経験にとどめずに、より社会的に広がり、蓄積、継承されていく方策をつくりだしていくことが求められます。
 
 ボランティア活動推進機関には、さまざまな団体をつなぐ接点となる重要な役割がありますが、そのためにもまず自分たち自身が環境、福祉、教育、国際、まちづくりなどの分野の縦割り意識にとらわれていないかを点検し、自分たちの組織が社会の国際化のなかで何ができるのかを検討することが求められます。
 
 そして、コミュニティ(地域)に対してどのような働きかけができるのか、推進機関同士が一緒に何ができるのか、そして地域を越えてどのようなつながりがもてるのかを考え、次のような協働プログラムを、関係者と共につくりだしていくことが求められます。

市民向けの学習機会の提供
 
 市民が気軽に活動に関する情報と学習を受けられる機会と場所があれば、国際化に向けた何よりの取り組みの促進剤となります。
 
 例えば、駅など市民の目にとまりやすい場所などに展示物を用意したり、困難な生活を強いられている外国人を地域社会の集まりや学校に招くよう働きかけ、経験を分かちあう機会を提供することが考えられます。
 
 また、地域での交流イベント、スタディツアープログラムの開発など、市民が実際に活動に触れる体験機会の充実が必要です。

活動団体間の協働の推進
 
 活動団体と協働し、ボランティアや市民がアクションのきっかけをつかむために、情報の共有化や発信を進めることが求められます。
 
 また、活動内容が同様のグループ間にとどまらずに、国内での交流活動を中心とした団体と海外への支援活動を行う団体との交流・学習、協働をつくりだしたり、いわば「異業種」のグループや団体にも声をかけ、福祉、環境、教育など、それぞれの団体の活動内容を切り口としながらも、そこから海外に目をむけ、国際的な問題へのつながりを意識していけるような素材やテーマを提供すること、国際化をテーマとした交流会を開催することなどが考えられます。
 
 活動団体、推進機関間での情報の共有化を進めながら、共同してホームページをつくり市民への発信を行っていくことや、市民の相談窓口となること、調査研究や提言活動を一緒に行うことも効果的な協働の取り組みといえます。

人材交流プログラムの開発
 
 海外駐在経験をもつ人が自治体やNGOのスタッフとして働くこと、NGOや推進機関間での人事交換、学生がインターンシップでNGO等の活動に触れることなどは、組織や団体に貴重な経験や刺激をもたらすでしょう。ボランティア活動推進機関は、このような人材交流プログラムを企業、行政、学校などと協力して開発していくことが求められます。

▲UP

 

 

(3) 企業や行政への期待〜より広範な活動基盤整備のために


●企業の社会貢献活動ヘの期待
 

 国境のボーダーレス化は経済活動や情報の面でいち早く始まり、今日では規模の大小にかかわらず多くの企業が国際化に直面し、日常的に海外とのつながりをもっています。海外での経験を契機に「企業市民」という考え方が広がったように、企業は今後も人々の意識や行動を変えていくうえで大きな影響力をもちます。
 
 具体的な期待として、まずボランティア活動を始めとする社員の社会的活動を一層認知、支援することがあげられます。NGOやボランティア活動推進機関等と連携した社員への学習や体験プログラム参加の機会を提供することなどが望まれます。
 
 特に、海外で社員がその地域の人々と交流したり、さまざまなNGOなどの活動に触れる経験をもつことによって、その人たちが日本に帰った後にも自主的に地域社会の活動に参加していくことが期待できます。それにより、例えば海外経験をもつ社員が学校の教育活動等にかかわるなど、地域の活動の発展に大きく貢献する可能性があります。社員の社会的活動を積極的に支援する企業風土をつくることを期待します。
 
 この他にも、企業理念や自社のもつノウハウ・特性を活かした社会貢献活動や、内外の活動団体への支援なども考えられます。

外国人に住みよい生活環境づくりのための行政の取り組み
 
 外国人にとっても住みよい生活環境づくりは、今後の日本社会にとって、住民同士が共生するための基盤といえます。
 
 公共施設・サービスに関するパンフレット、案内表示、交通表示などについて多言語で提供すること、外国人のための複数言語での相談窓口の設置など、外国人が公共サービスを利用する際のバリアを低くするための施策が求められます。
 
 また、国際交流を推進する多様な民間推進機関に対する支援、地域住民や活動団体の交流・活動が行える拠点の整備など、行政としての側面的な支援の充実が期待されます。

NGO等とのパートナーシップ
 
 NGO側が協働したねばり強い働きかけによって、現在では、政府機関とNGOとの定期協議の場がもたれ、ODAやNGOへの事業委託のあり方などについて話しあわれるようになりました。また、各省庁からの資金援助なども行われています。
 
 政府機関とNGOがそれぞれの役割・立場の違いをふまえ、協働していくためのこのような取り組みがより定着、充実していくことが望まれます。

▲UP

 

 

まとめ〜21世紀に向けて

ボランティア活動はささやかな営みですが、国籍や人種、言語、文化の異なる人々が、安心して心豊かに、希望をもって生きることを喜び、相互理解と信頼の絆を結べる文化を身近な地域社会のなかから創りだしていく力と、役割をもっています。そして、それは国際的な政府や機関をも動かし、経済社会のありようへも影響を与えるような大きな力となることを信じます。
 
 地球上には貧困や戦争や災害のゆえに、いわれのない苦痛や差別を受けている人々が多く存在しています。そのことを心にとどめ、ボランティア国際年を契機として、地球市民として国境を越えて、協働の輪を市民と共に広げるとともに、行政などの関係者に訴える努力を重ねていきます。そして、21世紀を貧困や戦争のない、平和で、希望がもてる世紀にするため歩んでいきたいと思います。

 

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