![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
|
1.地域社会をめぐるボランティア・市民活動の課題
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||
(1) 地域社会とコミュニティの意味の違い
「地域社会」とともに今回もう一つのキィーワードとなっている「コミュニティ」については、たとえば実践分野においても研究分野においても極めて多義的な言葉として使われています。言い換えれば、コミュニティに対する認識やイメージが多様に存在すると考えられます。
【参考】コミュニティの定義や考え方として、たとえばつぎのようなものがあります。
【例1】都市化の進展に伴うコミュニティの形成という観点からの分析例
コミュニティとは、住民が、主体的に創造し共有する普遍的な価値意識に基づいて行動することによって新しく形成されるものであるとして、(1)
社会の急激な変動によって解体・崩壊しつつある伝統的地域共同体のモデル、(2) 地域共同体モデルが変化する過程で生じる過渡的段階のモデル、(3)
大規模団地等に代表される地域共同体とは対照的な位置にあるモデル、(4) 都市化の成熟に伴って上記3つのモデルから移行していく「コミュニティ」モデルの4つのモデルを挙げている。(奥田道大『都市コミュニティの理論』、1983)
【例2】「福祉コミュニティ」づくりの考え方例
福祉コミュニティは単なる目標ではなく、コミュニティが構成する1つの社会状態をつくるという考え方で、(1) 社会福祉施設、ないしは在宅福祉サービスや活動、(2)
それを支えていく公私のネットワーク、(3) それに参加・協力する住民の意識・態度の変容の3つが一定の範域の上に成立することによってつくられる、という考え方。さらには、こうした多様な福祉コミュニティが地域に重層的につくられていくことは、結果的に、その地域社会が、福祉的様相を強く帯びたコミュニティづくりの進んだ状態をつくりだしていく、という考え方。(新版・社会福祉学習双書編集委員会編『新版・社会福祉学習双書2002
第15巻』、2002)
ただし、私たち(ボランティア活動推進機関)は、コミュニティという言葉のもつ意味について、地域社会とは必ずしも同義語ではないことを、はじめに確認しておきたいと考えます。
さらには、前項でふれた地域社会との関係でとらえれば、地域社会では、地縁関係がある意味でマイナスに働き、一人ひとりの自発的な活動や行動の選択の幅が固定的になった場合もありました。
その対称として、地域社会の中で、あるいは地域社会を離れてもコミュニティが形成される過程では、個々の人びとの価値観や想い、判断などにより自分が主体的に行動すること、いわば「個」の原理からの出発と、人びとが同じ想いや目的でつながる「ヨコ型」のネットワークが原点になると考えられます。
この際に、一人ひとりの「個人」は、活動の担い手、活動に伴うサービスの利用者、活動の推進者など、ときに一人で様々な役割を重複して果たしている場合もあります。
このように考えてくると、地域社会は、地域を基盤に地縁関係を母体として既に存在するもの、いわば「存在概念」といえます。また、地域社会は、それぞれの地域特性により極めて複合的で多様性のうえに成り立っている特徴もあります。
一方で、コミュニティは、地域社会という生活の場などにおいて、市民が市民としての自主性、主体性を自覚して様々な活動を通じて意識的に形成していくもの、いわば「形成概念」といえます。こうした特徴から、コミュニティは理念や目的を大事にする極めて機能的なものであると言えます。
以上のことから、地域社会が活動を育くむ「土」であり、コミュニティが種子を運んできたり、土を耕す「風」の役割を果たすものと言うことができるかもしれません。
(2) コミュニティをめぐる多様な論点
人びとにとって地域社会との関係が薄れていくなかで、従来のような強い絆ではないかもしれませんが、多様な問題解決に向けて、機能型、目的型など有機的なつながりによる柔構造の仕組みとしてコミュニティをイメージできないものかと考えます。
こうしたコミュニティの形成を通じて、協働や連帯といった社会的な新しい文化を創っていくことが、私たちにとって今後の大きな目標となっていきます。
さらには、ボランティア・市民活動との関係を考えていくうえで、コミュニティをめぐっては、以下のような多様な論点があることも認識しておきたいところです。
第1に、人びとが同じ地域に住んでいれば同じコミュニティに属していると見なすことがあります。しかし、これには異論の余地もあり、人びとが互いに近接して住んでいながら社会的接触はほとんどない、というケースも珍しくないからです。
また、これと同じ文脈でコミュニティをとらえると、学校、職場、企業単位のコミュニティの存在も考えられます。
第2に、コミュニティを、人びとの間の一連の相互作用を通じてできた社会的ネットワークとしてとらえられないか、ということです。この場合、地理的なコミュニティではない場合もあるでしょう。
たとえば、同じ国の出身者どうしの在日外国人のネットワークや宗教的な集団、あるいは難病、障害などの当事者間のネットワークも当てはまるかもしれません。これらのコミュニティに属している人びとは、社会的接触のパターンや経験を共有しており、連帯の意識が強いものと考えられます。
第3に、共通の文化をもっている場合にコミュニティと見なすことができるかもしれません。この場合、「文化」とは、一連の行動パターンや言語、歴史、共通の経験、規範・価値、生活様式などをさすことが考えられます。
第4に、共通の利害や関心をもっている場合に「コミュニティ」を形成していると見なすことができるかもしれません。近年急速に普及したインターネットや電子メールなどITを媒介とした「ネットコミュニティ」も当てはまるかもしれません。
さらには、コミュニティを生活課題を共にする集団と位置づけ、生活課題を解決する社会的なつながりとしてコミュニティをとらえることも考えられます。この場合、そのコミュニティの地域性や独自性は尊重しながら、閉じた集団ではなく、開かれたコミュニティとして考えていくことが必要な視点となります。
以上、ボランティア・市民活動をすすめていく際の「地域社会」、「コミュニティ」をめぐる状況や課題を見てきました。さらには、地域社会とコミュニティとの関係について考えてきました(別紙の参考図を参照のこと)。
今後、社会のありようを変えていくことに向けて、私たち(ボランティア活動推進機関)が果たすべき役割と課題について深めていきたいと考えていますが、現在の段階においても、次のことが大きな課題として挙げられます。
第1に、「地域社会」のところで見てきたように、地域社会を基盤として重層的に展開されてきた地縁的な自治活動、ボランティア活動、市民活動の3者を考えた場合、それぞれの活動団体間で、相互に見えない壁、意識のずれや葛藤が生じている場合があることを関係者が受けとめる必要があります。
米国に「良い垣根は良い友情をつくる」ということわざがありますが、まさにこのことわざのとおり、その違いや葛藤を互いに認めあい、存在をわかりあう、理解しあうことから、それぞれが共生に向けスタートできないものかと考えます。
今後は、地域社会のなかにどのような葛藤があり、共生できる手段としてどんなことがあるのか、さらには、私たちがつなぐ役割を果たしていくためには何ができるのか、たとえばその「きっかけ作り」となる事例の検討も含め、深めていく必要があります。
第2に、「コミュニティ」のところでふれたとおり、現在、わが国においても、地域立脚型だけではすまないコミュニティの多様化や多層化が進んでいると考えられます。市民の生活のある一面を支えるコミュニティの状況は、反面、その是非はともかく、社会の分極化や分断が進んでいるともいえます。
同時に、前項でみたとおり、地域社会とコミュニティが、今後は共存しあい、それぞれが地域の中に厚みをつけるために作用しあう必要があると考えます。
近年、「ソーシャルキャピタル」という言葉が使われはじめています。ここでは、「社会関係の含み資産」と意味付けした場合、この含み資産は、さまざまなニーズにこたえる「多様性」や、多様な活動主体者の参画で活動の質の厚みによる「重層性」、さらには、人びとの「参加性」という密度が高まるほど豊かなものになっていくと考えられます。
第1の課題と同様に、今後は、私たちとして、「新しい風」を受け入れながら両者をつないでいく役割を果たすために、何ができることなのかを深めていく必要があります。
図−1 地域社会とコミュニティの関係(概観)
地域社会とコミュニティとのかかわり方は、それぞれの地域性や特性によって極めて多様なパターンがあると考えられます。ここでは試みに、代表的な4つのパターンを概観してみました。
| パターン1(地域社会とコミュニティに重なりあっている層がある場合) |
|
| パターン2(地域社会のなかにコミュニティが点在している場合) |
|
| パターン3(地域社会がコミュニティを内包している場合) |
|
| パターン4(地域社会の外縁にコミュニティが存在している場合) |
|
図−2 地域社会とコミュニティの関係イメージ(例) |
![]() |
![]() |
| Copyright(c) 2002-2005「広がれボランティアの輪」連絡会議 |