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行政とボランティア、NPOとのパートナーシップ、
行政による支援のあり方に関する提言

(1996年6月13日)

<目次>
はじめに
1. 協働・支援における考え方
2. 行政としての支援体制や運用のあり方
3. 具体的な支援策
おわりに〜ボランティア、NPO、市民の課題

 

はじめに

  阪神・淡路大震災を契機に、ボランティア活動やNPO活動がこれからの社会には無くてはならないものだということを私たちは学びました。行政においてもこれらの活動の重要性が理解され、国のみならず、地方自治体においても様々な支援策が検討されるようになっています。このことは大変歓迎すべきことであり、行政がこれからのボランティア活動、NPO活動の発展のうえで重要な役割を果たすことへ大きな期待も寄せられています。
 
 しかし、わが国においては、ボランティアやNPOそのものについても、また、行政がこれらの活動の支援において果たすべき役割についても、共通した考え方や社会的な合意が必ずしもあるわけではありません。そのため、ボランティアやNPOの活動の社会的な役割やその特性、行政とこれらの活動との関係、行政がこれらの活動を支援する際の役割や基本的な考え方等といった点についての開かれた議論による合意づくりが必要であるといえます。こうしたことが不充分なままに行政が支援を行っても、せっかくの支援策がボランティアや市民の支援ニーズや活動の実態にそぐわないものになったり、本来の意に反して行政が市民の活動に過度に関与する結果を招くおそれもあります。
 
 この提言は、行政とボランティア、NPOとのよりよいパートナーシップがつくられるよう、ボランティア活動を推進・実施する民間の立場からまとめたものです。行政とボランティア、NPOとの新しいパートナーシップづくりのための様々な試みが各地域で積み重ねられ、ともに努力していくため、本提言が一助となることを願っています。

<NPOとは>
 Non Profit Organization の略であり、民間非営利団体、民間公益組織等と訳されている。非営利である(利潤追求、利益配分を行わない)ことと同時に、非政府である(政府機構の一部ではない)こと、自主的、自発的な行動を行うことなども意味されている。 ここでは、ボランティア団体、ボランティア活動の推進団体、市民団体、公益法人の一部等を指している。

 

▲UP

 

 

1.協働・支援における考え方

(1) 行政とボランティア、NPOはそれぞれが独自の役割を持った対等なパートナーだという認識が必要である−「対等性」
 
 行政は「公平性」を重視し、社会の基礎的・普遍的なニーズに対応するという役割があるのに対して、ボランティア、NPOの活動は「個別性」を重視し、行政とは異なる視点から行政では対応しにくい多様な問題への柔軟な対応を行ったり、さらに新たな行政課題をも発見するという役割がある。 従って、行政とボランティア、NPOはそれぞれが独自の役割を持ち、相互に補いあう対等なパートナーだという認識をもち、行政はこれらの活動の価値、自発性を最大限に尊重しながら連携・協働し、支援していくことが求められる。

(2) ボランティア、NPOの活動はそれぞれの独自の目的・理念にもとづく幅広く、多元的なものであることを理解し、長期的な視野から種々の活動を支援することが必要である−「多様性の受容と長期的な視点」
 
 ボランティア、NPOの活動は人々の多様な欲求に対応したものだけに多元性、多様性を持ち、一人一人の生活に欠かせないサービス・活動を提供できる。行政は、この多様性をまず理解し、最大限尊重することが必要であり、短期的な政策実現や効果だけを求めるのではなく、長期的な視野にたって種々の活動を支援していくことが大切である。

(3) 行政はボランティア活動、NPO活動に対しては基盤整備・環境整備や仲介・支援型NPOを通じた間接的な支援を行う必要がある−「間接的支援」
 
 行政が協働・支援を行う際には、ボランティアやNPOと行政との特性や行動原理の違いを充分理解し、行政の原則をいたずらに適用することが無いよう留意が必要である。
 
 特に、行政の支援には、一定の基準にもとづき、ある程度の活動実績を要件としたり、税金の使途や効果についての監査が必要なために、柔軟な支援を行うには限界があることも多い。また、行政が直接支援の窓口を設ける等の支援は、かえって活動の自由度、自発性を損ねる結果につながることも懸念される。従って行政による支援は基盤整備・環境整備等を中心に展開するとともに、仲介・支援型NPO(ボランティア活動、NPO活動を推進・支援する民間の非営利団体)を通じた間接的な支援を行うことが有効である

(4) 市民やボランティア、NPOとの対話、合意づくりのプロセスを大切にしながら、行政としての支援の理念や方針を指針等により明確にする必要がある−「『対等性』『多様性の受容と長期的な視点』『間接的支援』を実現するための市民との協働による指針づくり」
 
 行政がボランティアやNPOとどのように協働し、また、どのような考え方で支援を行うのかということについては、必ずしも社会的に合意された考え方はなく、行政でも部署、担当者レベルによってその考え方は異なっている。
 
 そのため、市民、ボランティア、NPO、有識者等の参画を得た検討委員会等を設け、行政としての支援の理念・目的、行政の基本的な役割と協働のあり方等に関する指針等を策定し、公開する必要がある。また、指針等の検討に際しては拙速を避け、対話と合意づくりのプロセスを重視するとともに、地域の実態や特性を充分に反映したものとすることが望まれる。

▲UP

 

 

2.行政としての支援体制や運用のあり方

(1) 支援策の現状や決定の過程に関する情報の公開−「情報公開」
 
 支援策は多様な活動に対して公平に開かれ、誰もが支援を得る可能性や機会が開かれていることが大切である。そのため、支援施策についての情報提供、公募制の導入等、また、行政のボランティア活動支援策の内容やその効果等についての情報の開示の仕組みを設け、市民やボランティア等からの評価やモニターを受け、地域のニーズや社会の変化に対応するよう必要な見直しが行われることが大切である。
 
 同時に、ボランティアやNPOの活動がより効果的になるよう、また、新たな課題に対応するためにも、ボランティア、NPOと行政との定期的な情報交換の場を設けることが望ましい。

(2) 行政の手続き・規則等の簡素化・柔軟な運用−「柔軟な制度運用」
 
 例えば、市民の活動に使用できるような公共施設は多々あるが、それぞれ使用目的、対象等が定められており、必ずしも柔軟に利用できるものとなっていない場合が多い。これらの運用を柔軟にする必要がある。
 
 また、行政からの助成金、補助金等はその性質上、申請、報告等の手続き、厳格な使途の指定、単年度の精算等が一般に求められる。しかし、これらのことが形式化することによって柔軟性を欠いた支援となりがちである。要綱等の簡略化、手続きの簡素化、公共的基金等により助成を行う等、できるだけ柔軟な運用ができるような改善を求めたい。
 
 なお、補助金が支出されている場合に、一部では補助事業以外の活動についても行政が指導をすることが見られるが、指導をする部分は補助事業の部分のみとし、なおかつ、その根拠となる要綱そのものもできるだけ簡素化する必要がある。

(3) 行政各部署等のボランティア・NPOに対する窓口や担当の明確化。行政各セクション間の調整機能の設置−「活動の多様性に対応しうる行政内部の調整機能の設置」
 
 ボランティアやNPOに対する行政側の窓口や担当者が必ずしも明確でないために、安定的な関係を形成していくことが困難である点がよく指摘されている。
 
 まず、ボランティアやNPOの活動に関連する行政の各部署において、窓口となる担当者が必要である。それにより、それぞれの分野の特性や相互の理解にもとづきボランティアやNPOとの連携、支援が可能となるような体制がつくられる。それとともに、既存の行政の所管には対応しない活動、複数の分野にまたがる複合的な活動にも対応できるようなコーディネートが可能な仕組みも必要である。
 
 また、個々の部署の施策に共通する方針が行政庁内で共有され、部署間の必要な調整・協力が行われるよう、庁内の調整機能を明確にする必要がある。なお、その際に大切なのはあくまで調整機能であり、ボランティアやNPOの活動を統合化・一元化するものではないことはいうまでもない。

(4) 第三者委員会等による行政の支援策の決定、運用、評価−「施策の決定・運用過程への市民参加・協働の仕組みづくり」
 
 支援策の決定、運用、評価は、行政だけで行うのではなく、第三者委員会(市民、ボランティア、NPOの代表者やそのネットワーク、有識者で構成する。構成員の選出、協議の過程の公開、意見の申立て等、透明性の確保や活性化を図るための工夫等が必要である)を設け、幅広い視野から行われることが望ましい。
 
 また、長期的・継続的にボランティアやNPOの活動を把握し、実態に応じた柔軟な育成・支援、評価を行ううえで、そのような知識・経験をもつ専門職員が配置されている仲介・支援型のNPOとの連携は欠くことができない。

(5) 行政職員自身が行うボランティア活動の支援、研修の実施による日常的な学習等の推進−「行政職員のボランティア活動への参加」
 
 有効な支援策が展開されるためには、行政職員自身がボランティア、NPOの活動を体験することも考えられてよい。それによって、行政職員のボランティア活動等への参加の支援、体系的なボランティア、NPO活動に関する研修等が行われ、日常的な理解・学習が促される。
 
 ボランティア、NPO等の活動への学習機会等を充実させることは、社会の新しい変化や生活課題を敏感にとらえ、幅広い、柔軟な視点で施策が展開できる行政職員を養成するうえでも大変有効である

▲UP

 

 

3.具体的な支援策

(1) 広報・啓発活動、情報提供システムづくり、ボランティア等の学校教育への位置づけ等の支援−「環境整備」
 
 ボランティアやNPOはその活動の価値・意義が広く社会に認められ、評価され、多くの人々の参加や支援の輪が広がっていくことを望んでいる。行政としても、行政の広報紙やイベント等において積極的にこうした活動をとりあげ、市民が日常的に意識啓発の機会が得られるよう支援してほしい。
 
 また、市民がボランティア活動、NPO活動に関する情報が簡単に入手できるよう、情報の提供、交流、共有の仕組みづくりについても支援策を検討することを望みたい。
 
 それとともに、幼いころからボランティア活動、NPO活動への理解・関心を育むよう、福祉教育、社会貢献教育、国際理解教育等を学校教育のカリキュラムに位置づけるとともに、家庭や地域における取り組みも広めていくことが必要である。

(2) 活動拠点の整備、仲介型NPOへの支援、地域福祉基金等の公共的基金の拡充等、活動発展の基盤に対する重点的な支援−「基盤整備」
 
 市民やボランティアが自由に活動に利用できる場所、空き教室等の開放、会館等の整備、及び、社会福祉施設、病院、公民館、博物館等の公共的サービスを行う機関における活動の場づくり等、活動の拠点、場の整備が必要である。
 
 また、相談、学習・研修、活動支援、ネットワークづくり、行政や企業・財団等との仲介等を行うボランティアセンター等の仲介・支援型NPOの活動は今後の活動発展の基盤であると認識し、これに対する重点的な支援が重要である点に理解を求めたい。
 
 また、柔軟で活動ニーズに合わせた財政的支援が行えるよう、地域福祉基金等公共的基金を拡充するとともに、助成を公募制とする、審査・評価に市民、ボランティア、有識者等を加える等の運用の改善を図ることが望まれる。

(3) 管理運営経費に対する支援、人材育成・確保等に対する支援−「人材確保・育成」
 
 ボランティアやNPOの活動に対する認知は広まったものの、これらの活動の推進・実施を行うためにコーディネーター等の専門スタッフが必要であり、また、団体の事務所の維持・管理、運営に相当の費用がかかる、という点への理解はうすい。未だにボランティアだからお金はかからないというイメージが依然として根強く、市民からの寄付や助成財団等からの助成にしても、管理運営費、人件費への充当に対する理解が得られないことも多い。そこで、行政にはこうした経費を積極的に認知し、支援することを望みたい。
 
 それに加え、行政の行う研修プログラムの開放、行政の専門職との交流等によって、ボランティア団体やNPOの専門スタッフやボランティアの資質の向上が図られることは大切であり、こうした研修機会等を積極的に設けることも期待したい。

(4) NPOに相応しい法人制度の創設、税制優遇措置等を積極的に進める−「法制度の整備」
 
 多元・多様な活動理念・広がりを持つボランティア団体、NPOが簡易に、明確な基準・手続きによって法人格が取得できるよう、NPOに相応しい法人制度やNPOが寄附金控除団体として取り扱われる等の税制優遇の改善を積極的に検討していく必要がある。
 
 これらの制度は、ボランティア活動、NPO活動が社会に認知され、発展していくための基礎的条件として重要であり、関係者のさらなる精力的な検討、努力を強く期待したい。
 
 また、ボランティア活動、NPO活動への支援や社会貢献活動を行う企業に対する税制上の優遇措置の拡大等の制度改善も必要である。

▲UP

 

 

おわりに〜ボランティア、NPO、市民の課題

 ボランティア活動やNPOの活動は、本来、市民自身のものです。行政に対して理解や支援を求めることと同時に、私たちは何よりもまず、ボランティアやNPOの活動が人々の生活に身近な、大切なものとして本当に認められているのか、自分たち自身のものとして活動が支えられているのかを見つめ直す必要があります。また、多くの解決すべき社会的な諸課題に照らして私たちボランティアやNPOの力を振り返った時、率直に、未だ力不足であることも認めざるを得ません。
 
 そのためには、自ら次の課題に取り組んでいくことが必要です。

(1) 支援とはあくまでもボランティア、NPOが主体的、自律的に活動を展開していく力を養うためのものであることを確認したいと思います。ボランティア、NPOとは自らの活動理念や目的にたって、主体的、開拓的に活動を行い、また、活動にともなう責任はあくまで自らが負うというものです。行政からの支援によってかえって行政への依存を高めたり、自らの活動理念やアイデンティティを失うようなことがあるとすれば、ボランティアやNPOに期待される本来の役割や存在価値を損なうことにつながります。

(2) 活動・事業、運営の状況については市民に明らかにし、市民とともにたえず活動を評価し、見直していくことが、自らの力量や信頼を高め、結果的には様々な支援を得ることにもつながっていくことになります。

(3) 具体的な活動展開の中で、広報活動や啓発プログラムの展開、楽しく、魅力的な活動の場、プログラムづくり等を行い、より多くの人に自分たちの活動の意味や魅力を伝えられるような取り組みを地道に重ねていくことが必要になります。スタッフやボランティアの研修・学習、専門的な知識や技術を持つ人々の参画の拡大等の人材育成を強化、長期的な構想力、提言能力を形成していくことも大切です。

(4) 民間の助成団体、企業や労働組合、市民とのパートナーシップの望ましいあり方を検討することも重要な課題です。これについては今後さらに関係者の方々との対話を重ねることが必要です。

 以上を実現するためにも、ボランティア、NPO間でのネットワークの形成、情報の交換・共有化などが大切です。それぞれの独自の理念や目的を原点としつつも、ゆるやかに連携し、共同の活動や提案等を行っていくことが大きな力となっていきます。
 
 これからの日本社会の中で、ボランティアやNPOが行政、企業と並ぶ市民による第三の領域の担い手として大きな役割を発揮していけるかどうかは、これらの活動が真に市民からの信頼を得て、市民によって支えられていくかにかかっています。そして、それは結局、ボランティア、NPO、そして一人一人の市民にかせられた課題であるといえます。

 

   
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